一番大きな取引先は、自社売上の何割を占めていますか?
皆さんはいくつかの取引先からお仕事を獲得されていると思います。その中でも請負額が一番大きな取引先は、自社売上の何割を占めていますか?
冒頭のグラフは東京都中小企業振興公社の「取引状況実態調査報告書」で発表している調査結果です。それによれば、「主要取引先『1社』だけで自社売上の3割以上を占めている」という中小企業がおよそ半数にのぼります。つまり、下請け事業者の約半数は、元請け1社に自社の売上を依存している状態ということです。
取引先を1社に集中させることで一定のメリットもあります。たとえば…
継続して仕事をもらえる
大きなミスさえしなければ、これまでの実績や信用の積み重ねで継続的に次の仕事をもらえる可能性が高いです。発注側も安心して任せられて楽な部分もあり。
新規取引先との労力が省ける
自社を売り込んで取引先を開拓し、契約書の取り交わし、口座開設、債権回収など、労力や事務手続きが不要です。
大口の工事をもらえる
丁寧な施工実績の積み重ねにより、より大きな現場を振られる・任される可能性も高まります。
勝手が分かり慣れた施工ができる
元請けが求めるポイントを熟知していて意思疎通も早いので、要領や力加減が分かり効率化も図れます。
などです。
このように、特定企業と密につながっている利点はたくさんありますが、一方で中小企業庁をはじめ、中小企業診断士、経営コンサルタントなどからは、「特定企業への依存度は3割以下にすべき」との声が多く挙がっています。
「自社の売上の3割以上を特定の会社に依存しないのが原則」
(中小企業経営コンサルタント・一倉定氏)
「与信管理のうえで、1社で全体の取引額の30%以上を占めるようであれば、かなり依存度が高い」
(中小企業診断士・高松留美氏)
「親会社への依存度が30%を超えていることは危険です」
(日本生産性本部 主席経営コンサルタント・鍵谷英二氏)
なぜ、1社への依存率を3割以下にすることが推奨されているのでしょうか?
それは、「経営リスク回避」が関係しています。
1社への依存度が高過ぎると「危険」な理由は?
取引先1社への依存度が高い場合は、具体的にどのような経営リスクが考えられるのでしょうか?
取引先を失った際のダメージが大きい
発注側の担当が異動して依頼先が変わったり、方針転換・災害・事件・倒産など、貴社ではコントロールできない外的要因で仕事が無くなることがあります。発注が無くなれば失う利益も甚大。最悪の場合、連鎖倒産の可能性も出てきます。
不利な条件でも請けざるを得ない
工期や予算、工事内容など現場の条件が厳しくても、今後の付き合いを考えると断れません。利益があまり出ない現場や多少足が出てしまう現場でも、無理して請けるケースがあります。たまにならいいのですが、「気付いたら常態化してた」という危険性もあります。
交渉で強気に出られない
提示された額が見合わない、工事途中の仕様変更や追加分が請求額に盛り込まれていない、取引先からの入金が滞っている、そんなときは取引先との交渉が必要です。一方、中小企業庁の「令和2年度取引先条件改善状況調査」によれば、建設業界の下請け事業者の8%は「発注側の言い値」で工事を請け続けている状態。取引先との関係悪化を恐れて、交渉をあきらめている事業者もいます。
新規顧客の仕事の優先度が下がる
新規取引先から条件の良い工事の話が来ていても、これまで懇意にしてきた主要取引先の工期や人員配置を優先するあまり、断らなければならないことも。せっかく掴んだ新規取引先と関係が疎遠になり、仕事の幅は広がらず、ますます特定企業への売上依存度は高くなります。
このように、特定企業への依存し過ぎは確かに経営リスクがあります。それだけでなく、利益率など条件の悪い仕事を続けることで売上も減り、スタッフに十分な労働対価を支払えなくなり、会社全体が疲弊。最悪の場合は事業継続にも悪い影響が出てしまいます。
「特定企業への過剰依存」から脱却する方法
ここまでご紹介した内容から、特定企業への過剰な依存は「経営リスク」であることがお分かり頂けたかと思います。しかし、
「今のところ仕事は普通にもらえているし…」
「今さら新規開拓と言っても…」
「現場が忙しくて、営業する暇がない…」
ということもあり、なかなか二の足を踏み出せない建設事業者さんも多いかと思います。
でも…
このまま何も動かなければ、この先もずっと”何も”変わりません。
打開策は、あります。
解決の糸口は、「新規取引先を開拓」することです。
新規取引先の開拓が順調であれば、仮にケンカ別れで売上を失っても、持ちこたえられます。取引先を失うことを恐れるあまり、不利な条件で仕事を継続するくらいなら、リスクを負ってでも自立を図るほうが経営リスクを回避でき、中長期的に健全な経営を目指せます。
では、どうやって新規開拓すれば良いのでしょうか?
新規取引先を開拓するために、何をすべきか?
新たな取引先の開拓方法はざまざまありますが、当社でおすすめするのは、ホームページによる「集客基盤の整備」です。現場で忙しかったり、営業人員を割けなかったりしても、しっかりと集客できるホームページがあれば、黙っていても24時間営業をしてくれるからです。
「元請けがホームぺージを見て施工業者を探す?」「人づての紹介がないと、信用して発注できないのでは?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実際、こんな声もあります。
これまでに工務店を中心に5件の新たな元請けを、ホームページ経由で獲得できました。いずれも、今までお願いしていた先が忙しかったり、ミスしたりして業者を替えたいというときに、WEBで検索してうちを見つけたという感じでした。
(MSI様|シーリング工事・東京都足立区)
「大分で電気工事ができる会社を探していました」というご依頼のほか、東京の会社さんから「大分で商業施設の防犯カメラの取り替え工事ができる方を探している」というお話もあり、さらに同じ会社さんから別の九州の物件で相談もありました。
(阿部電気様|電気工事・大分県大分市)
正直ホームページは、作って満足してたのですが、思いのほか問い合わせがあって…。それで見積りして、金額とかで直接話がトントンと進んで、契約に結びついていきました。「建設業も、ついにそういう時代なのか」って感じましたね。
(笹子タイル工業様|タイル工事・東京都小平市)
つまり、ホームページは元請け開拓に有効な手段と言えます。
新規取引先を開拓する「ホームページの作り方」とは?
ホームページが元請け開拓に有効ですが、
「一応ホームページはあるけど、反響は無いよ」
「ホームページで新規元請けから連絡来ないでしょ?」
という方もいるかと思います。
確かに、ただ単に「名刺代わり」「看板の代わり」として作ったホームページでしたら、お問い合わせが入る確率は低いでしょう。必要なのは、「元請けが求めている情報を、ホームページに記載・網羅しているか?」です。
たとえば、元請けが該当地域で工事ができそうな会社を探しているときのことをイメージしてみてください。得たい情報が明記されている会社とそうでない会社、2つが検索サイトで出てきたとします。そこで元請けが真っ先に選んで連絡するのは、「得たい情報が明記されている会社」になるのは容易に想像できるかと思います。情報が明記されていない会社は「二の次」あるいは「候補のテーブルにすら載らない」というのが実態なのです。
では、自社を「元請けの業者選定のテーブルに載せる」ためには、どんな情報を載せたら良いのでしょうか? 具体的には、最低でも以下の情報を明記することをおすすめします。
請負い可能な工事種別(事業紹介)
大枠ではなく、細かい部分まで明記しましょう。たとえば「電気工事」であれば、低圧・高圧・特別高圧の中でもどんな工事ができるのか、弱電設備工事も含めどこまで施工可能なのかどうか、など。
これまでの工事実績(施工事例)
どんなJVの下でどんな範囲・規模の工事を行った実績があるのかを明記しましょう。これらは貴社の信用にもつながり、請負い可能な工事の規模感も掴めます。
保有資格・職人数(会社概要)
資格がないとできない工事や、必要となる施工管理技士の頭数を揃えないと入れない現場もあります。これらの情報があれば、話がスムーズです。
保有する重機や工場設備(設備概要)
工期に見合う工事ができるかどうか、要件を満たす加工ができるかどうかなど、該当する工事をどこまで任せられるか、貴社のキャパシティを判断するための大切な要素になります。
いかがでしょうか? もしこれからホームぺージを作成するタイミングであれば、ぜひこれらの項目を盛り込みましょう。もしホームぺージをお持ちで上記の情報がなければ、早急に追記をしましょう。
さいごに
本来、発注側と請負い側とでの仕事は、双方にメリットがなければいけません。もし時間の経過や環境の変化により、当初あった互いのメリットが、いつの間にか片方だけになってしまっている状態になってしまっているのであれば、元の「双方にメリットがある状態」に戻すための交渉が必要です。それで駄目だったら、これ以上惰性で無理をして取引を続ける必要はないのです。
しかしそこから脱却できない事情があるのであれば、新たな取引先を獲得するように動くことで、経営リスクを回避した健全な経営状態に持っていくことができます。
ぜひ貴社もホームページでしっかりとした集客基盤を整え、特定企業に依存しない「強い会社」を目指しましょう!