住宅の新規着工数がじわじわと減り続け、リフォーム需要が8割を超えると言われる屋根や外壁の塗装工事業界。仕事が縮小傾向にある一方で、新規参入は増え続けています。
たとえば国土交通省が発表する建設業許可業者数(※)で、塗装は2009年の47,041業者から2019年には61,363業者へと、10年間で1.3倍に増えています。塗装会社の許可取得率は13%とされているので、日本全国で塗装業者は47万業者以上という計算になります。
これだけ競争が激しい今、Webマーケティング、特に自社ホームページで「選んでもらう」ことが欠かせません。そこでこの記事では、効果をあげるための塗装会社のホームページづくりを解説します。
※引用:国土交通省|建設業許可業者数の結果について|https://www.mlit.go.jp/common/001288296.pdf
■関連資料
建設業界におけるエンドユーザー集客の極意
塗装会社のホームページの現状
塗装会社は比較的小さな企業や個人が多いこともあって、自社ホームページはLP(ランディングページ)タイプの縦に長い1ページで自社をアピールするものが多くなっています。
掲載する内容は、パターン化している傾向があります。
一般的な塗装会社のホームページの内容
- 外壁や屋根のイメージ写真
- 使用する塗料の種類
- 工事の価格帯
- 耐用年数
- 会社の場所や連絡先
といったところが一般的です。
しかし、それではどこも同じような内容になるため、なかなかアクセスは集まりません。目的とする問い合わせなどにもつながりません。ではどうしたらいいのか、3つの視点からホームページのつくりかたを解説していきます。
SEOの視点~「外壁塗装+地名」検索に答えがある
ホームページで重要なのは、まずはアクセスを集めること。いわゆる「集客」です。
集客の経路としては、以下の5つがメインです。
- GoogleやYahoo!などの「検索結果」からの流入
- 他のホームページの「リンク」からの流入
たとえば業界団体や協会のページ、依頼先紹介サイトなど - FacebookやInstagramなどの「SNS」からの流入
- Googleマイビジネス(「Googleマップ」)からの流入
- Web「広告」からの流入
最近はSNSの活用に力を入れる企業が多いですが、芸能人や広告費を潤沢にかけられる企業でもない限り、なかなかSNSからの流入は難しいのが現状です。
- Facebookは広告を使わないと拡散しにくい
- Instagramは女性ユーザーがメインで、業種が限られる
- Twitterはビジネスにはつながりにくい
といった特徴があります。予算や運用の手間をあまりかけられない中小企業の場合、1)の検索結果からの流入が一番効果を期待できます。そのためには、検索結果で上位に来る必要があります。それをSEO(検索エンジン最適化)と呼びます。
たとえば「外壁塗装+東京」という複合キーワードで検索した場合、上位かどうかでどのぐらいアクセス数が違うかというとーー。
1位が断然多く、10位以内に入らないと、流入はあまり期待できません。
検索結果で上位に表示されるためにすべきこと
1)ターゲットとすべきキーワードを選ぶ
「外壁塗装」「屋根塗装」といったキーワードで上位に表示されれば効果を期待できますが、そういった競合の多いキーワードだけではなかなか上位を獲得するのは難しいものです。ほかに、塗装を依頼したい人が困っていそうなキーワードを挙げていきます。たとえば「外壁剥がれ」「屋根補修」といった周辺キーワードや、自社が得意とする工法などです。
2)キーワードを実際に検索
GoogleとYahoo!を使って、1)で挙げたキーワードを検索していきます。地名(地域名、都道府県名、市区町村名など)も加えた複合キーワードも検索します。
3)上位10位までの競合をチェック
検索結果に出てきた上位10位ぐらいまでの競合ホームページをひとつひとつ確認していきます。
- 項目…どんな内容が入っているか
- 用語…どんなキーワードが入っているか
これら確認して書き留めていき、比較します。
4)自社のホームページに取り入れる
上位ページに共通して入っていた項目は、そのキーワードでホームページを作る際に必要な項目だと言えます。自社のページにも入れていくようにします。用語も共通のものがあれば、自社のページに取り入れます。たとえば自社では「ローラー塗装」という用語を使っていても、検索上位ページに同じ意味で「ローラー工法」という用語が多く使われていたら、何カ所かを「ローラー工法」という用語に変えます。用語を統一せず、あえて表現を揺れさせることで、どちらのキーワードにも対応させることができます。
5)そこにオリジナルな内容を加えていく
ただ、他と同じ内容だと検索エンジンの評価が上がりませんので、そこに自社独自の内容を加えることで、自社ページが「見るべきページ」だという評価を受けることができます。それが次のマーケティングの視点です。
マーケティングの視点~選ばれるためには理由が必要
お客様が依頼する先を決める時には、選ぶ理由があります。その理由となる情報を提供するのがホームページの役割です。お客様が選ぶ理由はさまざまです。たとえば、クレジットカードのポイント命の人にとっては、カード決済可能かどうかが大きな理由のひとつになるでしょう。
SEOの視点で、候補のひとつに入る、「普通」の状態になったとしたら、候補の中から抜け出すためにオリジナルな内容が必要です。日本一のような大きな話でなくても構いません。お客様は特徴をいろいろ見て、ひっかかるポイントが多いところを選ぶ場合が多いものです。
競合と差別化できる内容
1)会社の顔
会社の歴史、オフィスの写真、アクセス、用意がある場合はお客様用駐車場
2)社員の顔
社長の創業ストーリー、スタッフ紹介、保有資格
3)実績
それぞれ写真付きで、工事実績や施工事例。リフォームの場合はビフォー&アフターで
4)工事手法
社員による責任施工(日雇いやアルバイトに丸投げしない)、工事方法の種類、使用塗料、使用道具
5)価格
予算オーバーなしの価格保証、最低価格保証(他社の見積もりより安く)
6)数字による訴求
施工実績数、創業からの年数
7)お客様の声
お客様とのエピソード、お客様からいただいた声、アンケート結果
8)ブログ
ブログには個性が出るため、オリジナルな内容になりやすく、SEO上も評価が高いコンテンツです。塗装業界のトレンドや、工事の豆知識、新しい塗装器具など、日々仕事をしていく上で当たり前のことでも、お客様にとっては新鮮な内容と感じられます。
いくつか例を挙げてきましたが、自社の場合は具体的に何を入れればいいのかわからないという方は、塗装会社をお客様に紹介するエージェントの優良判定システムが参考になりそうです。下の画像は、「外壁塗装コンシェルジュ」というエージェントが、お勧めできる優良会社を選ぶ際に出す質問の一部です。これらに答えていくと、自社の特徴が浮かび上がってきそうです。
セールスの視点~「CV(コンバージョン)」を考える
ホームページをつくる目的は、契約の前段階の問い合わせや見積もり依頼、現況調査を獲得することだと思います。そのためにマーケティングの視点で「選ばれる理由」を作ったとしても、最後の難関が待っています。
それは、「問い合わせ」などの「送信ボタン」を押してもらうことです。Webマーケティングでは「CV(コンバージョン)」と呼びますが、これがなかなか難しいのです。
たとえばEC(ネット通販)で、何かを買い物かごに入れて、そのまま買うのは4人に1人というデータがあります。要は商品を選んで、買い物かごにまで入れながら、75%は買わずに離脱するのです。それは問い合わせなどの場合も同じです。
時折、中身はしっかりしているのに、問い合わせフォームなどがなく、ページの一番下に小さく電話番号やメールアドレスが載っているだけ、のようなもったいないホームページを目にします。載せる内容だけでなく、CVのところにも気を配りましょう。
CV率を高めるために気をつけること
1)連絡手段は多様に用意
お客様にとって、問い合わせしやすいツールは違います。音声電話は使わない、ファックスは持っていない、という人も増えてきました。問い合わせフォーム、電話、ファックス、LINE@、Facebookメッセンジャー、Instagramメッセージ、Googleマイビジネス・メッセージあたりが候補になります。自社で導入できるものは用意しておくと、問い合わせ件数が増える可能性が広がります。
2)フォームはとにかく簡単に
EFO(入力フォーム最適化)がWebマーケティングの1分野になるほど、問い合わせフォームは奥深く難しい世界です。基本は、とにかくなるべく簡単にすることです。離脱率が高いフォームは、質問が多い、個人情報を詳細に聞かれる、承認を押すためのページがあるなどページ遷移がある、などです。質問がひとつ増えれば、確実に何割かは離脱すると考えるべきです。
3)PDCAで改善を続けていく
フォームは簡単なほうがいいですが、フリーアンサー欄だけでもなかなか書きにくいものです。ここはさじ加減なので、一度作ったら終わりではなく、質問を増やしたり減らしたり、フリーアンサーから選択式にしたり、必須項目を増減させたり、試行錯誤して改善を続けていく必要があります。
4)最後の一押しを用意
対面の営業でもWebでも同じで、最後の決断を後押しするサービスや特典を用意すると、CV率が上がります。期間限定特価、今なら特典付き(商品券プレゼントなど)、ローンの金利優遇、ポイントカードとの提携、塗装にまつわる本や冊子のプレゼント、施工例資料ダウンロードなど…。CVの最終段階で躊躇して悩んでいるお客様の背中を、そっと押してあげる特典を用意してください。
塗装会社の参考になるホームページ事例
最後に、実際の塗装会社のホームページで、参考になりそうなものをご紹介します。どれも工夫が凝らされた、問い合わせが期待できるサイトです。
熱い職人魂とホスピタリティが両立したお手本
静岡県焼津市を拠点に外壁塗装・塗り替えリフォームを行う「岩田塗装店」。10人に満たない少数精鋭の企業ながら、ホームページの充実ぶりは驚くほどです。メニューだけ見ても、この充実ぶりです。
しかも、それぞれのコンテンツはしっかり作られています。この会社のサイトの凄いところは、道具や仕上がりへのこだわりや技術への追求といった職人魂の部分と、モダンなサービス精神が両立しているところです。
たとえば、問い合わせ手段も、問い合わせフォーム、フリーダイヤル、ファックス、メール、Facebook、Instagramと多様に用意されています。
このホームページを武器に、下請け仕事から完全に脱却し、元請けに転換できたそうです。一見の価値があるサイトです。
工事待ちを10件以上抱える人気の塗装店
適正価格で10年保証をうたい、埼玉県幸手市の幸手駅前で塗装店を構える「塗替え本舗」。わずか10人ほどの規模で、わずか4年足らずで予約で工事待ちが発生するほどの人気店に育っています。
ホームページはオレンジを基調に、文字フォントの選び方や色使いで楽しそうな雰囲気を醸し出しています。内容的には、一般的な塗装会社のホームページらしい構成です。
特徴は、価格表です。外壁と屋根の工事費を、家の延床面積別・塗料種類別に提示しています。これはお客様にはわかりやすいと思います。なぜなら、一般の素人の方からみれば、塗装工事の相場はもちろん、だいたいの目安すらわからない状態だからです。つまり、価格表示のないサイトは、メニューのないレストランと同じです。普通の方であれば、入店するのをためらってしまいますよね。
塗装会社さんの中には、「価格は現場の状態や塗料によってピンキリだから、一概に言えない」「価格がひとり歩きしそうで恐い」という方もいらっしゃるかと思います。もちろん、「ありえない激安価格で客寄せしておき、見積り時(あるいは施工開始後)に実際の価格を提示する」という手法の塗装店も多く、それが塗装業界全体への不信や疑心につながっているのも事実です。
ただし、今後ますますSNSが普及していきますので、提示価格の不正を行う悪徳業者はネットで叩かれて存続しにくい運命にあると予測できます。また、価格だけで選ぶお客様は、それなりのお客様であることも、塗装業界にいらっしゃる方であればご存知だと思います。表示する価格によって、そのあたりの顧客の選別にもなるのではないでしょうか。
つまるところ、塗装業界の信用を取り戻して健全化をはかる意味でも、正直な価格提示をして、価格に幅があるなら幅を持たせてでも、明記しておくのがおすすめです。
なお、塗替え本舗さんでは、近くの郵便局で塗装相談会を開催するなど、リアルのイベントも行いながらコンスタントに契約を集めているそうです。余裕がないとなかなかできませんが、やはり最初から顔が見えているのは信用・信頼の面ではるかに有利です。スケジュール面で調整が付きそうであれば、ぜひリアルイベントもご検討ください。
1ページタイプ、ランディングページの王道
神奈川県横浜市で屋根・外壁塗装を中心にリフォーム全般を行う「ホームライフ」。従業員数20名と、塗装会社としては大きく、実績数も多くなっています。Webサイトとしては、コーポレートサイトとは別に、ランディングページが用意されていて、その内容が1ページものの企業ホームページを作る際の参考になるので紹介しておきます。
冒頭の施工実績のアピールも目を引きますが、なんといっても1ページでお客様の心を動かす構成がこのページの特徴です。
●ページの構成
1)塗装についてのよくある悩みを提示して、自分のことだと認識してもらう
2)社員の顔出しで会社に親近感が沸くように
3)施工事例を見せて、技術的に信頼できるとわかってもらう
4)選ばれる理由で会社としての信用を醸成
5)工事の流れで、しっかり工事する会社だという安心感を醸成
6)実際に施工したお客様の声で信頼感を醸成
7)最後のダメ押しとして、外壁診断士の説明で技術力をアピール
8)そのままの流れで問い合わせフォームがある
と、読み進めることで、お客様を説得していくスタイルです。特に「お客様の声」は、お客様が顔出しでホームライフの良さを紹介しているので、効果的なアピールになりそうです。
まとめ
乱立気味の塗装会社。独自の個性がなければ、なかなか選んでもらえません。
ホームページの内容を考える過程は、自社の特徴をくっきり鮮明にしていく過程でもあります。ぜひ経営の問題だと捉えて、真剣に構成を考えてみてください。
■関連資料
建設業界におけるエンドユーザー集客の極意