「建設DX」で、建設業の何が変わる?~メリットや活用される技術を解説

     
建設DXで建設業の仕事の流れはどう変わる?集客
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ここ数年耳にすることが多くなってきた建設DX。一体何のことで、どんなメリットがあるのでしょうか?
ここでは、建設DXについてわかりやすく解説します。

建設DXとは?

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術の浸透によって社会や生活、ビジネスのあり方を変えることです。2019年に経済産業省が取りまとめた「『DX推進指標』とそのガイダンス」では、DXを以下のように定義付けています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること

重要なのは、デジタル技術によって製品やサービスの質を向上させるだけでなく、業務や組織、文化などを根本的に変革するのがDXだということです。作業の自動化や効率化は、あくまでも手段にすぎません。それを通して仕事のやり方そのものを見直し、課題解決につなげてこそDXが実現できます。

そして建設DXとは、もちろん建設業界におけるDXのことです。建設業界ではこれまでにも、新たな技術の導入によって効率化や機械の多機能化を進めてきました。建設DXではそれをさらに進め、AI(人工知能)、ICT(情報通信技術)、IoT(モノのインターネット)といったデジタル技術を活用することで、建設プロセス全体の変革と最適化を図り、建設業界が抱えているさまざまな問題の解決を目指しています。

さらに、国も建設DXの実現に向けて動いています。代表的な取り組みは、建設現場の生産性向上を目的とし、国土交通省が主導している「i-Construction」です。このプロジェクトは、「ICTの全面的な活用」「規格の標準化」「施行時期の標準化」の3つの施策を柱としています。特に重点が置かれているのは「ICTの全面的な活用」です。

具体例としては、BIM/CIMの原則適⽤が挙げられます。国土交通省の方針により、小規模を除くすべての公共事業において、2023年度からBIM/CIMが原則適用されることになりました。つまり、BIM/CIMを導入できていない会社は、今後公共事業を受注できない可能性があるのです。

将来的にはこの方針が民間にも広がったり、ルールが追加されたりする可能性もあります。もはや建設DXは、建設業界で生き残っていく上で、必ず実現しなければならない取り組みだといえるでしょう。

建設DXが注目される背景

国を挙げて建設DXが推進されている背景には、建設業界の抱えるさまざまな事情があります。建設業界においてDXが注目されている理由を見ていきましょう。

人手不足

よく知られている通り、建設業界は深刻な人手不足に陥っています。国土交通省が2021年3月に発表したデータによると、ピークの平成9年には685万人いた就業人口が、2020年には492万人まで落ち込んでしまいました。

他の業界に比べて高齢化も著しく、2020年の建設業の就業者のうち、55歳以上が36%を占め、29歳以下の割合はわずか12%です。これは労働力不足を引き起こすだけでなく、優れた建築技術の継承も困難にしてしまっています。

働き方改革

建設業界は、労働時間が非常に長い状態が続いてきました。前述の国土交通省の報告によると、2020年における建設業従事者の年間実労働時間は1,985時間で、全産業の平均である1621時間より約2割も多かったのです。年間の出勤日数も、全産業の平均212日に対し建設業は244日となっており、休日も十分に取得できていないことがわかります。

このような状況の改善を目的として、働き方改革関連法が施行され、2024年4月からは時間外労働の上限が罰則付きで設けられる予定です。労働環境を改善し新たなルールに対応するためにも、建設業界では働き方を根本から見直す必要性に迫られています。

生産性の低さ

建設業は生産性の低さも大きな問題になっています。2019年の付加価値労働生産性を見ると、建設業は2872.9円/人・時間で、全産業平均の5788.7円/人・時間の約半分しかありません(建設ハンドブック2021より)。これは人手不足や長時間労働の常態化に加え、現場ごとに環境が異なるため、業務の標準化が難しいことなどが関係しています。

対面主義

建設業界では、報連相や情報共有、作業指示、そして会議などは対面で行うべきだという「対面主義」が根強く残っています。そのためテレワークがなかなか普及せず、効率のいい働き方ができていません。総務省の「情報通信白書(令和3年版)」によると、2020年における建設業のテレワーク実施率は15.7%で、全体平均の24.7%を下回っています。

建設DXを導入するメリット

建設DXは、建設業界のあり方を根本から変え、数多くのメリットをもたらすと期待されています。建設DXの主なメリットを見ていきましょう。

業務効率化につながる

建設DXは、業務を大幅に効率化してくれる可能性があります。たとえば、テレワークやWeb会議、施工管理アプリなどが定着すれば、確認作業や監督業務を会社や自宅で行えるようになり、移動時間が減るでしょう。また、建築物の3次元モデルを作成すれば、視覚的な情報に基づく正確な仕様を確認でき、迅速な打ち合わせや品質向上が見込めます。

さらに、CRM(顧客管理システム)やSFA(営業自動化)といったシステムを導入すれば、情報の一元管理が可能になり、業務の効率化やミス防止が期待できます。もちろん顧客の満足度向上にもつながるでしょう。

省人化につながる

テレワークや3次元モデルの導入による業務効率化は、より少ない人数での仕事を可能にします。また、重機の遠隔操作を導入すれば、危険な作業を安全に行うことができ、1人で複数の機械を操作することも可能です。これは労働者の負担を減らし、人手不足の解消にもつながります。

さらに近年では、AIの発達によって「自ら考える機械」の実用化が見えてきました。AIを搭載した建設機械による自動施工などが普及すれば、作業の効率化や省人化がより加速するでしょう。

技術継承を効率よく行える

デジタル技術を活用すると、熟練技術者の作業手順や判断のポイントなどをデータとして残すことができます。これを会社全体で共有すれば、熟練者から直接指導を受けなくても、優れた技術を学ぶことができます。一度に多くの人が学ぶことができ、後から何度でも確認できるのもメリットです。

また、熟練者の動きや思考をAIに学習させれば、AIに熟練者と同等の作業をさせることもできます。将来的にはAIの普及により、今まで以上に高品質で安定した工事が可能になるでしょう。

国交省が部局を横断して取り組むインフラDX

国交省が部局を横断して取り組むインフラDX(出典:国土交通省)

建設DXで用いられる技術

建設DXを実現するためには、さまざまなデジタル技術を活用する必要があります。建設DXで用いられる主な技術を簡単にご紹介します。

ICT3次元データ

BIM/CIMの導入などに必要不可欠なのが、3次元データの活用です。現実空間にあるものを仮想空間上でリアルに再現する「デジタルツイン」や、3Dプリンタによる建造物モデルの制作は、建物の設計や工事の計画策定において大いに活用できます。最近ではスマートフォンから3次元モデルデータを作成する技術が開発されるなど、より扱いやすくなってきています。

AI

AIも幅広い分野で活用可能です。たとえば、ドローンで撮影した映像をAIに解析させ、建造物の老朽化した部分を調べるという使い方ができます。また、熟練技能者の作業の様子をAIに学習させ、データの分析・蓄積によって人材育成の資料にするという、機械学習の機能も役立ちます。

SaaS(クラウドサービス)

従来のように、図面や事務書類を紙媒体で管理していると、情報のやり取りや管理が煩雑になりがちです。そこでクラウド型の管理システムを利用し、拠点ごとに紙媒体で管理していた情報をデータとして一元管理すると、業務の効率化やノウハウの共有が期待できます。代表的なツールとしては「CAREECON 施工管理」があります。

ドローンや映像技術

建設に付き物の高所作業は危険を伴い、足場の組立費用などのコストも小さくありません。しかし、ドローンを使って映像を撮影すれば、高所の点検作業を安全かつ低コスト・少人数・高効率で行うことができます。ドローンを用いた定期点検により、劣化した箇所を早期に発見・修繕し、総合的なメンテナンスコストを抑えることも可能です。

RTK測位

RTK(Real Time Kinematic)とは「相対測位」という意味で、衛星を使って1cm単位の正確な位置情報を取得する技術です。農業機械やドローンなど、精度の高い位置情報を必要とする機器やシステムに活用されます。

小規模な建設現場に対応したICT施工

小規模な建設現場に対応したICT施工|出典:国土交通省「i-Construction、インフラ分野のDXの推進について」

建設DXは、まず何から取り組むべき?

建設DXの必要性・重要性を理解しても、「いきなり高度なことはできない」「なるべく簡単なことから始めたい」という方は多いと思われます。そんな時、建設DXの第一歩としておすすめなのが「ワークフローシステム」です。

ワークフローシステムとは、社内の稟議や申請手続きなどを電子化するシステムを指します。どのような使い方ができるのかを見ていきましょう。

インターネット集客

ホームページやSNSを使ったネット集客も、DXの一種です。インターネット集客は、チラシなどを使った従来型の施策よりも細かい分析が可能なので、効率よく顧客を獲得できます。結果として、利益アップやリーズナブルな価格設定につながり、会社と顧客の双方にメリットが生まれるのです。BtoCだけでなく、BtoBでの元請け開拓にも効果があります。

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顧客管理

顧客管理システム(CRM)を活用すると、業務効率や契約率の向上が期待できます。顧客情報を一元管理して可視化することで、見込み客への働きかけやOBへの定期訪問といった営業活動の漏れがなくなり、機会損失を防げるからです。紙媒体の資料と異なり、紛失のリスクや検索の手間が小さく、仕事の引き継ぎが楽というメリットもあります。

クラウド管理

商談や見積もり、発注、現場管理、アフターフォローなどの業務をクラウド上で一元管理すると、業務の大幅な効率化が見込めます。情報共有が簡単になるため、連絡ミスの防止や情報伝達の負担軽減にもつながるのが魅力です。さらに管理職の立場で見ると、全体の業務量を把握しやすくなるので、仕事の割り振りの調整やオーバーワーク防止に役立ちます。

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CAREECON(キャリコン)施工管理は、図面、撮影写真、報告書などをクラウド上で一元管理することで、現場管理業務の生産性を向上させるクラウド型施工管理ツールです。

オンライン顧客対応

ビデオチャットなどを活用したオンライン顧客対応を導入すると、遠方の顧客や忙しい顧客、小さな子供がいて来場が難しい顧客など、通常対応では取りこぼしがちな顧客のニーズに対応できます。契約後の打ち合わせもオンライン化すれば、移動にかかる時間がなくなり、業務が効率化されて従業員の負担が小さくなります。

最近では、多人数を対象とする家づくりセミナーなど、オンラインイベントを定期的に開催する会社も見られるようになりました。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大以降は、オンライン相談のニーズが急速に増加しており、今後も普及が続くと考えられます。

googlemeet

Gmailの「Google Meet」でも、簡単にオンライン会議を開始できます。

無人モデルハウス

無人モデルハウスもオンライン顧客対応と同じく、コロナ禍で普及が加速した手法の1つです。感染対策としてだけでなく、24時間、非対面方式でゆっくりと見学できるため、営業をかけられるのが苦手な人の来場も期待できます。予約制にすれば顧客情報も取得できますし、スタッフを常駐させる必要がないことから、現場の負担軽減にもつながります。

オンライン展示場やオンライン内覧会を開設するには専用のソフトを使う方法もありますが、YouTubeやFacebookに360°動画を上げて貴社ホームページにリンクを埋め込むなど、費用を掛けずに展開することも可能なので、検討してみてください。

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まとめ

建設DXが実現すれば、建設業界のあり方が根本から変わり、長年続いてきたさまざまな問題を解決できる可能性があります。取り組むべきことはたくさんあるので、簡単にできそうなことから始めるのがおすすめです。まずは自社で発生している問題を分析し、どのような点を建設DXによって解決できるのかを検討してみましょう。

BRANUでは、建設DXの導入支援を行っています。ホームページ制作による集客や求人、施工管理ツールを用いたデジタルシフトなどにより、事業改善を支援しております。建設DXに取り組みたいものの、やり方がわからない時や思うような結果が出ない時は、BRANUまでお気軽にご相談ください。

     
この記事を書いたライター
政所健司

建築専門出版社にて住宅誌の編集長を歴任。国交省・住宅金融支援機構・NEDO等の広報誌制作業務に参画後、LIXILリフォームショップFC店の企業広報を経て現在BRANU株式会社にてマーケティングを担当。「現場で一番汗を流している人たちこそ主役に」という考えのもと、中小零細企業へのIT支援・DX支援・事業支援を通じて建設業界の古い産業構造の改革を目指す3児の父。

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