集客・求人などをインターネット上で行う、いわゆる「デジタルマーケティング」を実践する場合、ほとんどのケースにおいて自社のホームページが中心的な役割を果たします。言い換えると、求人広告を出したりチラシで集客したりする際に、ホームページが受け皿・窓口になる時代になってきています。
つまり、デジタルマーケティングで効果を出すには、その土台であり基盤であるホームページの整備が必須なのです。そこでホームページの改修やリニューアルへと話が進むわけですが、その際に「どのCMS(Contents Management System:コンテンツ・マネジメント・システム)を使用してホームページを制作するのか?」という点が検討課題となることがあります。
CMSは、ホームページを構築する骨組みに該当します。語弊を恐れずに例えるなら、住宅や建物の構法・工法に該当し、「木造軸組、2×4、軽量鉄骨、RC、SRCのうち、どれで建てますか? ほかにもログハウスやドーム、コンテナなどの飛び道具や混構造も全然アリですよ!」、というのと同じです。
とはいえ「CMS」と言われても、ふだん建設業に従事されている方にとっては、なんとなく聞いたことはある、あるいはまったく聞いたことがない方のほうが多いと思います。
そこで今回は、CMSの基礎知識やメリット、その種類と最新動向、注意点などを解説します。自社ホームページを制作するにあたり、最適なCMSを選ぶためのヒントにしてください。
CMSって一体何? 使うとどんなことができるの?
CMSとは、ホームページ(Webサイト)上のテキスト(文章)や画像、全体のデザイン・レイアウト(配置)などを一元管理するためのシステムのことです。CMSを活用すると、複雑で面倒な作業をしなくても、管理画面を通じてホームページを制作・更新することができます。
といっても、実際にホームページの制作に関わったことがない方にとっては、今ひとつ理解しづらいはずです。そこで、CMSを導入していない場合と導入している場合で、ホームページの仕組みがどのように違ってくるのかを確認しておきましょう。
CMSを導入して「いない」ホームページ
CMSを導入していない場合は、コンピュータ言語を使って完成形のホームページのデータを1ページずつ作ります。コンピュータ言語には、HTMLやCSSなどの「マークアップ言語」や、JavaScript、PHPなどの「プログラミング言語」といった種類があります。
CMSを導入して「いる」ホームページ
CMSを導入している場合は、ホームページに必要なテキストや画像、テンプレート(雛形)といった各種データを、データベース上に個別に保存しておきます。それらをCMSが必要に応じて取り出し、ホームページを自動的に生成している……というイメージです。
CMSを導入してホームページを制作するメリット
CMSを導入してホームページを制作すると、導入していない場合に比べてさまざまなメリットが得られます。主なメリットを見ていきましょう。
【メリット1】専門知識なしでもホームページを制作・更新・追加できる
CMSを導入する最大のメリットは、専門的な知識がなくてもホームページを制作できることです。前述したように、CMSなしでホームページを作る場合は、コンピュータ言語などの専門的な知識が求められます。何の知識もない方が企業のホームページをCMSなしで制作するのは、ほとんど不可能といっていいでしょう。
その点、CMSを導入すれば、ある程度の知識を身につけるだけで誰でもホームページを制作・更新できるようになります。最初の構築を専門業者に依頼したとしても、その後の更新作業はある程度自分たちで行えるのです。既存のテンプレートを使えば、新しいページを追加するのも難しくありません。
【メリット2】更新コストを削減できる
CMSを導入していない場合は、ホームページの内容に手を加えるたびに、HTMLなどの記述を直接編集しなければなりません。つまり、ホームページの文章をたった一文変更するだけでも、専門業者に外注する必要があるのです。しかし、CMSを使うとある程度の更新は社内で行えるので、外注コストを大幅に削減できます。
【メリット3】ホームページの更新スピードが上がる
ホームページの更新・改善を外注したり、特定の担当者だけに任せたりしていると、作業のスピードが遅くなりがちです。しかし、CMSを導入すれば更新を社内で行えるようになり、外注の手間が省けます。さらには編集の容易さから、部門や担当者ごとに管理・編集権限を与えて組織的に運用できるため、更新のスピードが大きくアップするのです。
【メリット4】マルチデバイス対応が容易になる
パソコンやスマートフォン、タブレットなど、異なるデバイス(端末)でも同じようにサービスを利用できるようにすることを「マルチデバイス対応」といいます。CMSなしでマルチデバイスに対応する場合は、PC用とスマホ用で別々にホームページを作らなければなりません。異なるデバイス用のホームページを見ると、表示が崩れてしまうからです。
一方、CMSを用いてホームページを作ると、それぞれに対応したテンプレートを使ってPC用とスマホ用のページが自動生成されます。そのため、デバイスごとのホームページを設ける必要がなく、マルチデバイス対応の手間が半減するのです。スマートフォンが普及している現代においては、とても大きなメリットといえます。
CMSの大まかな種類と特徴
CMSはとても便利なシステムですが、どれを使っても同じというわけではありません。一口にCMSといってもさまざまな製品・プログラムがあり、その効果を最大限に発揮させるためには、自社に最も適したものを選ぶ必要があります。そこで、CMSの大まかな種類と、それぞれの特徴を押さえておきましょう。
オープンソース型CMS
プログラムの設計図である「ソースコード」が、一般に公開されているタイプのCMSです。ライセンス費用がかからないので安価に導入できます(外注する場合は制作費等が必要)。数多くのホームページで採用されている汎用的なCMSであることから、カスタマイズも比較的簡単です。
ただし、ほとんどのオープンソース型CMSは商用利用を想定していません。加えて公式のサポートも受けられないため、何か不具合があっても自己責任となります。こういった性質上、基本的には小規模なホームページ向きです。代表的な製品としては、WordPress、Drupal、Concrete5、Joomla!などがあります。
商用パッケージ型CMS
商品として販売されているCMSです。基本的には商用利用を前提として開発されており、不具合・脆弱性に対する保証があって公式のサポートも受けられることから、中~大規模のホームページにも対応できます。
その反面、ライセンス費用がかかるのに加え、ホームページ構築の初期費用もオープンソース型に比べて高くなりやすいなど、コストの負担が大きくなるのがデメリットです。代表的な製品としては、中規模サイト向け(数千~数万ページ)ならHeartCoreやNOREN、大規模サイト向け(数万ページ以上)ならAdobe Experience ManagerやSitecoreなどがあります。
フルスクラッチ型CMS
制作するホームページに合わせて独自に開発されたCMSです。独自の機能を搭載して複雑な運用をしたい場合や、自社システムとの密な連携が必要な場合に採用されます。専門業者に発注して1からシステムを作り上げるので、開発・導入費用が高額になり、導入に時間がかかる点に注意が必要です。
CMSはマーケティングツールとしても成長中!
ここまで見てきたように、従来のCMSというものは、ホームページの制作・運用を効率化するために用いられるものでした。しかし近年では、CMSの役割も進化しており、デジタルマーケティングツールとして使うケースが増えています。つまり、CMSから得られるデータを顧客獲得や業務改善に活用しようというわけです。
たとえば、多くのCMSでは「ユーザーがどんな経路でホームページにやってきたのか?」「どのページが1番見られているのか?」といったことがわかるアクセス解析機能を搭載しています。このデータを分析すれば、ユーザーの求める情報や好まれる商品サービスなどを把握できるのです。
また、顧客管理用のツールやシステム・CRM(Customer Relationship Management、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)と連携できるCMSもあります。CRMに登録されているユーザー情報(年齢、性別、住所、購入履歴など)と、ユーザーのホームページ上での行動を組み合わせ、そのユーザー向けに最適化されたページを表示できるのです。
さらには、インターネット上のシステムを利用するクラウド型になっていて、アプリのように機能やセキュリティを随時アップデートしてくれるCMSもあります。このタイプのCMSを使えば、更新が来るたびに手動でアップデートする手間が省け、セキュリティも万全に保てるでしょう。このように、CMSはどんどん多機能になっているのです。
注意点:中小建設会社は無料CMSを選ぶべきでない理由
最後に、CMSを選ぶ場合の注意点について解説しておきます。先にご紹介したように、CMSにはWordPressのような無料のものもあれば、有料のものもあります。中小の建設会社様の場合だと、「費用を節約したいし、当社の規模なら無料で十分だろう」と考える場合が多いでしょう。
しかし、中小企業のホームページ制作に無料CMSはおすすめできません。なぜなら、無料CMSは有料CMSと異なり、ベンダー(販売業者)のサポートを受けられないからです。何のサポートもない状態で制作を始めると、ホームページの住所に当たる「ドメイン」や、データの保管場所である「サーバー」の準備の段階でつまずく可能性があります。
また、いくら専門知識が必要ないとはいえ、企業にふさわしいクオリティのホームページを作り上げるのは、初心者には困難です。アフターフォローの乏しさからトラブル発生時の対応も難しく、担当者が退職したために運用がストップするケースも珍しくありません。さらに、初心者にはセキュリティ対策も難しいため、サイバー攻撃に弱くなるという問題もあります。
以上の点を考慮すると、中小の建設会社様がホームページを制作する場合は、有料のCMSを採用するのがおすすめです。たとえ無料のCMSを使うのだとしても、ホームページ制作の専門業者に委託するのが望ましいでしょう。
まとめ
現在は、無料のものから有料のものまで、数多くのCMSが存在しています。どのCMSもそれぞれ特徴がありますので、自社の事業スタイルに合うものをお選びいただければと思います。最適なCMSを選べば、品質の高いホームページを作ることができ、更新作業も効率よく行えるでしょう。
一方、十分な知識を持たないまま安易にCMSを導入したために、機能を使いこなせず放置したり、不具合が発生したりするケースは珍しくありません。CMSを有効活用するためには、まず導入の目的を明確にした上で、ホームページの運用体制を整える必要があります。
そして、最も重要なのがパートナー選びです。プラン策定から運用・更新まで、手厚くサポートしてくれるホームページ制作会社をパートナーにすれば、どのような建設会社様でも安心してホームページを運用できます。まずは信頼できるパートナー探しから始めてみましょう。