建設業界の7割が後継者不在! 廃業しないための選択肢とは?

     
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人材不足が深刻な建設業界ですが、後継者不足も深刻です。

業績好調でも後継者がおらず、廃業や身売りを考える会社もみられます。従業員が高齢な場合も多く、従業員の次の仕事を考えると会社を畳む決断は難しく、雇用を守るために頭を悩ます経営者の方もいるようです。

ただ、M&Aが少しずつ一般化してきて、事業承継の道が広がってきています。後継者に悩む企業にはどんな道があるのか、ご紹介します。

建設業界は屈指の後継者不足業界

後継者不足は高齢化が進む日本全体で顕著ですが、そのなかでも建設業界は屈指の後継者不足の業界です。2017年の東京商工リサーチの「全国社長の年齢調査」によると建設業の社長の平均年齢は60.49歳と高齢化しています。また、全業種で70歳以上の社長は26.18%も存在します。

引用:東京商工リサーチの「2017年 全国社長の年齢調査」|http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180213_02.html

2017年の休廃業・解散件数は2万8142件と倒産の3.3倍に達しており、後継者不足に悩む会社がいかに多いかがうかがえます。

国も大きな問題ととらえており、全都道府県の事業引継支援センターに「後継者人材バンク」を設置し、「事業承継補助金」を交付して対策を行っていますが、なかなか解決には至らないのが現状です。

社長の年齢別にみる後継者不在率は?

帝国データバンクの調査によると、全国平均で65.2%の企業が「後継者がいない」と回答しており、特に建設業界は71.4%と深刻で、業界的に後継者問題が差し迫っているのがわかります。

年齢別に見ると、40代まではあまり考えておらず、50代と60代に対応を進める会社が多いようです。

引用:帝国データバンク|全国・後継者不在企業動向調査(2019年11月発表)|https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/p191104.html

建設業界の後継者不在率

建設業界では、7割以上の企業が「後継者がいない」と答えていて、全業種平均より5%以上高くなっています。

業績好調でも、後継者難での廃業もある

業績が好調でも、後継者難で廃業を考える会社も多くあります。日本政策金融公庫によれば、60 歳以上の経営者のうち 50%以上が将来的な廃業を予定しており、このうち「後継者難」を理由とする廃業が全体の約 3 割にのぼります。

2016年の経済産業省推計では、2025年には中小企業・小規模事業者の約245万人が70歳以上になると予測され、120万の会社が後継者未定です。また、2025年までの10年間で廃業により、650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性があるとも推計されています。

廃業する会社の半数は黒字ですが、社長の年齢が上がるとともに増収率は下がっており、社長が高齢化するほど業績に負の影響を与えていることがわかります。体力や気力の衰えに比例して業績も下がっていく現実を感じて、黒字のうちに廃業を選択する社長もいるのかもしれません。

引用:東京商工リサーチの「2017年 全国社長の年齢調査」|http://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20180213_02.html

そういった、もったいない廃業をしないために、後継者不足の企業にはどういう選択肢があるのか、ご紹介します。

選択肢1:後継者を募集して承継

実は、社長が引退して廃業する会社の9割は後継者を探すことなく廃業しています。会社の廃業の可能性を感じてから行った取り組みでも「特に対策を行わなかった」が大きな割合を占めています。誰かに継いでもらいたいと思っていないという方もいますが、それはもったいないのではないでしょうか。

引用:中小企業庁「中小企業者・小規模企業者の廃業に関するアンケート」|廃業の可能性を感じてから行った取組|https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H26/h26/html/b3_3_3_2.html

社長の在任期間が長いほど親族への事業継承割合は増え、社長在任35年以上では92.7%が親族継承です。しかし、在任5年未満では65%が親族以外へ事業を継承しています。これは、事業継承が親族以外でも可能なことを示しています。

引用:中小企業庁|事業承継に関する現状と課題「経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係」|https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/jigyousyoukei/2016/160426jigyousyoukei5.pdf

承継パターンとそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。

1)親族内承継

息子や娘、その配偶者、孫、甥・姪に事業を継承することを親族内承継といいます。日本では古くからある方法ですが後継者の資質や意志も必要です。経済や社会の変化が激しい現在では、親族に「会社を継がせる不幸」を意識する経営者の方も増えているようです。

メリット:

オーナー家としての地位を継続でき、引退した社長が引き続き経営に影響力を持ち続けることができます。後継者に社内で重要な役割を与えながら事業承継の準備を進めることができます。


デメリット:

後継者が適格者であるとは限らず、重要なポジションの従業員が退職するケースがあります。また、引退した社長が影響力を残すことで新社長と対立し、親族がゆえにビジネスライクな話し合いにならず泥沼化する事例も見受けられます。

 

2)親族外の役員や従業員への承継

社内で働いている親族以外の役員や従業員に事業を承継するケースです。親族が事業を継ぐ意志のない場合や親族に適格者がいない場合に行われることが多く、なかには事業発展のため敢えて従業員承継を選択する企業もあります。人材不足の業界にあって後進の育成に成功した場合の承継方法です。

メリット:

社内の業務を熟知している後継者へ事業を継承するため、円滑に事業承継できます。社長が自分の経営理念を理解して会社を発展させられる後継者を選択するため、経営の一貫性を保てます。

デメリット:

事業が抱える債務について、オーナー社長の個人保証を含めた引き継ぎとなります。後継者に個人保証の引き継ぎを含めたリスクを引き継ぐ覚悟が必要ですし、借入している金融機関にも相談が必要です。株式譲渡を低価で行うと贈与とみなされ課税されることもあります。

 

3)社外の第三者への事業継承

人材不足による後継者不在の問題の解決策として注目を集めています。金融機関や商工会などの紹介だけでなく、インターネットのマッチングサイトで事業承継に特化したサービスを提供する会社もあります。ネットで社長の思いを継いでくれる第三者を探すことも可能です。

引用:事業承継・M&AならBatonz(バトンズ)|https://batonz.jp/flows/buyer

メリット:

信頼できる第三者へ事業を譲渡することで、長年培ってきた企業のノウハウを途絶えさせることなく、従業員の雇用を守りながら事業を存続・拡大させることが可能になります。社外から経営者を受け入れるため短期間での事業承継が可能です。


デメリット:

適格な第三者がすぐに見つかるとは限りません。また、経営者が変われば企業文化も変わっていきます。そのため、第三者への事業承継は社内に大きな混乱を招く可能性もあり、社員のモチベーションが失われて退職するケースも見受けられます。

選択肢2:M&Aで会社を譲渡

企業間の「M&A」による事業譲渡は急増しており、M&A件数は10年で2倍になっています。M&Aは大手企業が行うイメージですが、中小企業を相手にするM&A仲介会社が出てきています。

引用:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社|M&A件数の推移|https://www.ma-cp.com/about_ma/

とはいえ、まだまだ身近ではないと思いますので、M&Aについての疑問にお答えします。

M&Aで株式や経営権はどうなるのか?

M&Aには合併や買取などの「資本提携」と、技術提携や販売提携する「業務提携」があります。中小企業のM&Aによる事業譲渡は資本提携の方法のひとつで、議決権を行使できる過半数の株式を相手に譲渡し経営権を移転します。一般的には特別決議要件等を考慮し、2/3以上の株式譲渡が行われることが多いようです。株式譲渡による方法は手続が簡便で迅速に支配権を移転できるため広く用いられます。

会社ってどのぐらいで売れるのか?

実際に会社はどれくらいで売れるのでしょうか。会社の経営や資産の状態など諸々の条件で総合的に判断して決まりますが、売り手側の社長の気持ちも大きく影響し「従業員の雇用を継続してくれるなら安くてもいい」という方もいるようです。

マッチングサイトでは譲渡希望額を知ることができますので、公開している決算資料と譲渡希望額をもとに交渉している案件もみられます。

引用:事業承継・M&AならBatonz(バトンズ) |建設・工事の事業承継・M&A売り案件一覧

会社を譲渡したら建設業の許可はどうなるのか?

事業譲渡により他社の建設業を譲り受けても、その会社の建設業許可も一緒に引き継ぐことはできません。事業を譲り受ける会社が(1)から(3)の条件を満たして建設業許可を申請することになります。

(1)建設業の申請と同じ業種の経験経営経験が5年以上の常勤経営業務管理責任者がいること
(2)常勤の専任技術者がいること
(3)請負契約を履行するに足りる財産があること
(自己資本500万円以上もしくは500万円以上の預金残高証明書)

建設業の許可はおりるまでに一定の時間がかかることもあり、進行中の工事物件の請負額が500万以下なら問題ありませんが、超えるようなら譲渡日の調整が必要となる場合があります。

また、(1)の常勤経営業務管理責任者の経験経営年数は、2020年10月の法改正で「国土交通省令で定める基準」となります。具体的な内容は公表まちですが、内容によっては許可申請のハードルが下がり、事業譲渡が進むかもしれません。

M&Aを仲介する会社もあります

会社のM&Aを考えた時にどのように進めればよいか迷う方も多いと思います。取引金融機関の紹介などもありますが、専門のM&A仲介会社に依頼する方法もあります。最近増えているM&A仲介会社をご紹介します。

・M&A総合研究所

東京都港区六本木にある建設・土木会社のM&Aや売却に特化したコンサルです。経験豊富な専門アドバイザーが全国どこでも対応しています。完全成功報酬制で着手金なしですので、先々のM&Aを見越した相談も可能です。

引用:M&A総合研究所|https://masouken.com/lp/civilconstruction

・事業承継総合センター

リクルートが提供するオーナー社長のための後継者探し・買手企業探しサービスです。複数のM&A仲介会社の案件を比較することができます。着手金はなく成果報酬として5億円以下の譲渡金額なら5%の手数料を支払うだけです。

引用:事業承継総合センター|https://rbsp.jp/about.html

・M&Aキャピタルパートナーズ株式会社

東京都千代田区にある大手コンサルです。M&Aを多く手掛け、事業継承に関するセミナーなども開催しています。相談は無料で相手先の会社との基本合意までは料金が発生しなしシステムです。

引用:M&Aキャピタルパートナーズ株式会社|https://www.ma-cp.com/service/uri_flow.html 

・株式会社ビズ・ミディエーション

大阪府羽曳野市にあり「スモールM&A.com」を運営しています。関西の中小企業や個人事業主の事業継承とM&Aをサポートしています。中小企業のグローバル戦略の支援も行っています。

引用:スモールM&A.com|http://manda.biz-mediation.com/

・株式会社トランビ

東京都港区新橋にあり、オンラインM&Aマッチングサイト「トランビ」を運営しています。オンラインで売り手と買い手をマッチングすることに特化しており、売り手と買い手が直接交渉するシステムです。そのため手数料が安価で、成約時に買い手が支払う成約価格の3%のみです。

引用:TRANBIサイト|https://www.tranbi.com/

M&A仲介会社を選ぶ際の注意点は?

近年のM&A仲介会社の増加にともない、M&Aを勧める営業メールも増えてきています。上の4社は比較的実績のある会社ですが、どこの会社がベストなのかは一概には言えません。

M&A仲介会社を見極める簡単なポイントとして考えられるのは、以下の4つです。

1.取引実績の確認

実績の多い会社はノウハウも豊富で、より良いアドバイスがもらえる可能性が高いと考えられます。

2.実績のある業種が求める業界のものか確認

仲介会社によって強みのある業界があり、ミスマッチだと、求める業界の案件が少なかったり、業界ならではの事情がわからなかったりする場合があります。

3.税理士など税金のプロに相談できる会社を選ぶ

M&Aは様々な税金が発生します。売買の手法などによっても変わってきますから、必要に応じて税金の相談ができる環境を提供している会社が安心です。

4.着手金など手数料の内容を確認

ご紹介した会社は成功報酬型の手数料ばかりですが、なかには登録するだけで着手金が必要な会社もあります。登録して待っていても案件を紹介されず時間が過ぎていくケースもあるようですから、依頼前に料金システムに確認して契約しましょう。

M&Aは会社と従業員、そして経営者や経営者家族の将来を左右する大切な事業活動です。なるべくたくさん話を聞いて決めることが成功への道だと考えます。M&Aの後の経営のアドバイスをしてくれる会社もありますので、仲介会社のサポート内容を納得できるまで聞いて信頼できる相手を選ぶように心がけてください。

残念ながら会社を畳む場合の注意点

事業継承やM&Aを検討しても、結果的に会社を畳むことになってしまう場合があります。いくら社長でも会社の廃業を個人の意思で決めることはできませんので、会社を畳む場合は「株主総会で法人解散の決議」をすることになります。その後、清算人を決め清算手続を始めます。

登記関係だけでも、解散登記・清算人の選任登記・清算結了の登記と官報公告が必須です。それに加えて、解散日までの税金を申告する「清算確定申告」や労働保険の「確定保険料申告」もしなければなりません。また、建設業の許可を持っていれば30日以内に廃業届の提出も必要です。

廃業日以後の会社については清算人が契約の解除や債権債務の回収・支払、在庫や資産の処分を代理で行います。それらの手続が完了して残余財産があれば株主に分配します。

従業員に対しては、退職金の上乗せや未消化の有休の買取、失業保険の特定受給資格者に該当する離職票の作成(50代ですと最大330日分の失業手当がもらえます)などの対応をとることで、突然職を失う負担を減らすことができます。

会社がハローワークへ再就職援助計画を提出して、社員の再就職のアドバイスをもらうこともできますので、相談してみることをお勧めします。

まとめ

後継者不足は人材不足とならぶ日本の大きな問題です。建設会社の経理にいる私は、取引先の廃業のご案内を目にすることも増えており、長年お取引のある会社が廃業するのはとても残念です。

業界的に親族が継がないなら廃業することが多いように感じていますが、M&Aなど選択肢はありますから、廃業を検討する前に事業を残す方法を考えてみてはいかがでしょうか。

     
この記事を書いたライター
岸上直大

WEBマーケティングのコンサルティング提案、コンテンツ制作、WEB広告運用を中心に手掛けているディレクター&ライター。MA、SNS、BI、SEOなどのwebマーケティングからAI、IoT、ロボティクスといった新技術系まで幅広い知見があり、現在、世の中のWEBマーケティング格差を埋める新事業を計画中。

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