皆様は、最近Google検索の結果表示が変化していることにお気づきでしょうか?
検索結果の最上部、もしくは広告枠のすぐ下に、
「生成 AI は試験運用中です。」という表示とともに、
検索したクエリの回答をわかりやすく要約してくれるようになったのです。
これは「SGE(Search Generative Experience)」という機能で、検索者にとっては便利なものです。一方、サイトを上位表示させたい企業にとっては「表示位置が押し下げられてしまい、自社サイトへのアクセスが遠のくのでは?」という不安が生じています。
さらに、「Microsoft Edge」にも「Copilot(コパイロット)」というほぼ同様の機能が搭載されています。結果として、「上位表示を狙うために地道に取り組んできた、これまでのSEO施策は何だったのか?」という戸惑いの声も聞かれるようになりました。
そこでこの記事では、SGE/Copilotとは何か? これまでのように自社サイトへの流入を促すにはどうしたらいいのか? といった点について詳しく解説します。
「SGE」「Copilot」とは?
SGEやCopilotについては、「よく知らない」「聞き慣れない」という方もまだまだ多いかと思います。まずは、これらの概要を知っておきましょう。
SGE/Copilotとは?
SGE(Search Generative Experience)とは、Google検索の結果画面の上部に、生成AIによって導き出された回答が表示される機能です。2023年5月に発表され、6月からアメリカで試験運用が始まり、日本でも2023年8月30日から開始されています。(※執筆時点では、Google Workspaceのアカウントには表示されない仕様になっています)
SGEに使用されている生成AIは、Googleが開発した「Search Labs」です。この生成AIによって、さまざまなページから情報が収集・引用され、検索への回答として結果ページの上部に表示されます。SGEの登場によって、ユーザーは情報の収集や取捨選択の手間が少なくなり、従来よりもスムーズに必要な情報を得られると期待されているのです。
なお、Microsoft Edgeには、ほぼ同様の役割を担う「Copilot」という機能が搭載されています。Copilotには、OpenAIのGPTが使用されています。
SGEとSEOは何が違う? どんな関係があるの?
SGEについては「SEOと似たようなもの?」と思う方もいるかもしれませんが、2つは根本的に異なります。そもそもSEO(Search Engine Optimization:検索エンジン最適化)とは、自社サイトへの検索エンジンからの流入を増やすための、Webマーケティング手法の1つです。
ユーザーがGoogle検索で検索すると、検索キーワードへの回答となるWebページが表示されます。どのようなページが上位表示されるかは、Googleのアルゴリズムに基づく順位付けによって決まります。
当然、より上位に表示されるほどユーザーが流入しやすくなるため、Webサイトを作成・運用する側は上位表示のための施策を実行します。この施策の総称がSEOなのです。
一方SGEは、検索に対して生成AIが回答を提示する「Google検索側のシステム」であり、「Webページ運用者側の施策」であるSEOとはまったく性質が異なります。ただ、検索結果で上位表示されるページ(適切な回答を提供しているページ)が、SGEにおける情報引用元になりやすいのも確かですから、2つは無関係ではありません。
そして、SGEがWebページを評価し引用しているという性質上、引用されやすくするための施策も存在します。まずSEOが土台にあり、その施策の1つとしてSGE対策があると捉えればいいでしょう。
SGE/Copilotの登場でSEOは不要になるの?
SGEの登場によって、ユーザーは検索に対する答えを入手しやすくなりました。では、今後SEOは不要になってしまうのでしょうか?
結論からいうと、SGEが普及したとしても、SEOが不要になることはないと考えられます。なぜなら、すべてのユーザーがSGEによる回答に満足するわけではないからです。満足できなかった(検索ニーズが満たされなかった)ユーザーは、従来通りに自ら情報収集を行うため、SEOは大きな効果を発揮するでしょう。
ただし、SGEの回答で満足するユーザーがいるのも確かであり、その結果としてSEOによる集客効果が減少する可能性があります。今後のSEO対策では、SGEで満足できなかったユーザーの獲得に重点を置く必要があるでしょう。
SEOはどうなる? 生成AIによる影響と必要な対策
SGEが普及しても、SEOが無意味になるわけではありません。しかし、負の影響を受ける可能性もあるため、SEOにも従来とは違った対策が求められるようになります。SGEがSEOに与える影響と、それへの対策について見ていきましょう。
Webページのアクセス数が減少する可能性あり
SGEが普及すると、自社のWebページへのアクセス数が減少する可能性があります。SGEの回答に満足したユーザーは、その時点で検索行動をストップする可能性が高いからです。
もちろん今の段階では、SGEの回答の精度が低く、満足するユーザーはそれほど多くないかもしれません。しかし、生成AIの進化は目覚ましく、いずれは精度が改善されていくと考えられます。たとえ検索順位で1位になっても、アクセス数は減少すると予測されるため、SGE対策は必須といえるでしょう。
コンテンツの独自性・信頼性アップを!
SGEは、さまざまなWebページから情報を集め、回答として提示します。傾向として、(執筆時点では)とても深掘りした情報が出てくるわけではないのですが、概要を理解するための情報としては十分です。それで満足できなかったユーザーは、より深い情報を求めて検索行動を続けると考えられます。
逆にいうと、古い情報や誤った情報、独自性・専門性の低い情報を掲載しているページは、SGEで満足できなかったユーザーを獲得できるはずがないのです。今後のWebサイト制作では、今まで以上に最新情報や正確な情報を盛り込み、専門性やオリジナリティの高いコンテンツを制作する必要があるでしょう。
AIの回答にリンク表示されるWebサイトを目指そう
SGEの回答には、情報の引用元となったWebページへのリンクも表示されます。そしてSGEの「簡易的なまとめ回答」では満足できなかったユーザーが次に訪れるのは、大抵の場合この引用元のページです。
つまり、SGEの回答の引用元になることができれば、多くのユーザーの流入が期待できます。今後のWebサイト制作では、「SGEに引用されるコンテンツ作り」が重要なポイントとなるでしょう。
ただ、「SGEがどのような文章を引用して回答を生成するのか?」という基準はまだ判明していません。現時点では、前述した信頼性・独自性・専門性などに加え、「要約しやすい文章である」という点が大きなポイントなのではないかと予想されています。
SEO対策はクエリタイプごとに行う
もはやSEO業界では鉄板となった「検索意図(インテント)」ですが、これを改めて見直してみましょう。Googleは、検索クエリを「Knowクエリ(知りたい)」「Buyクエリ(買いたい)」「Doクエリ(したい)」「Goクエリ(行きたい)」の4つに分類しています。
Knowクエリは、「解体工事 注意点」「アスベストとは」など、特定の知識・情報を知りたい場合のクエリです。Buyクエリは、「塗り壁 口コミ」「壁紙 おすすめ」といった、購入・利用する価値があるのかどうかを調べたい場合のクエリが該当します。
また、Doクエリは「港区 足場業者」「配管工事 協力会社」など、特定の行動がしたい時のクエリです。そしてGoクエリは、「BRANU株式会社」「鹿島建設」など、特定のWebサイト・ホームページに行きたい場合のクエリで、ほぼ固有名詞です。
これらのうち、KnowクエリとBuyクエリはSGEの影響を大きく受けると考えられます。なぜなら、SGEが提示した回答で満足する可能性が高いクエリだからです。結果としてWebページを訪問する必要性が薄れ、ゼロクリックサーチ(どのWebページにもアクセスせずに検索行動を終了すること)が増加するでしょう。
一方、DoクエリやGoクエリは、特定のページにアクセスして何らかのアクションを取る必要があるクエリです。そのため、SGEによって内容を要約した回答を提示されても、多くのユーザーはWebページを見に行きますから、SGEの影響をあまり受けないと考えられます。
つまり、今後のSEO対策では、クエリのタイプに応じた対策が求められるのです。特にKnowクエリとBuyクエリについては、検索以外の流入経路を確保するなど、これまでとは違った対応を考える必要があるでしょう。
SGEが普及した時代に求められるマーケティング対策
SGEが普及すると、検索結果からの自社サイトへのアクセスは減少すると予想されます。そのため、新たなマーケティング対策を行い、別の流入経路を確保することが重要です。今後に備え、ぜひやっておきたい4つの対策をご紹介します。
E-E-A-Tを意識してコンテンツ制作を行う
今後のマーケティング対策で特に重要なのが、こちらも鉄板施策として普及している「E-E-A-T」を意識したコンテンツ制作です。こちらも、改めておさらいしておきましょう。
E-E-A-Tとは、「Experience(経験)」「Expertise(専門性)」「Authoritativeness(権威性)」「Trust(信頼性)」の4要素を指します。かつては「E-A-T」でしたが、現在ではExperience(経験)が追加されてE-E-A-Tとなりました。
Expertise(専門性)は、情報の専門性の高さ=どれだけ特化しているかを示す指標です。たとえば、「配管工事」と「プラント配管工事」では、後者の方がより高い専門性を持つのは明らかです。
Authoritativeness(権威性)は、そのWebサイトが社会的な権威を持っているかどうかを示す指標で、専門性や信頼性を補強します。同じ「鉄筋工事のポイント」を解説する記事なら、個人ブログより専門業者の公式ブログを読みたくなる方が多いでしょう。これが権威性です。
Trust(信頼性)は、そのWebサイトや運営者が信頼できるかどうかを示す指標です。たとえば、匿名掲示板の書き込みよりも、専門メディアの記名記事の方が、責任を持って書かれているため信頼できます。なおGoogleは「著者情報はランキング要因ではない」と明言しているものの、著者ページの作成、プロフィールの構造化データの記載は推奨しています。ユーザー視点からも、著者情報は入れたほうが良いでしょう。
そして、最近のGoogleが特に重視するようになってきているのがExperience(経験)です。経験とは即ち「実際に体験してみないとわからない情報」のことで、建設業においては過去の施工実績や、それに基づくさまざまな知見が該当します。つまるところ、オリジナリティがあるコンテンツが高く評価されるようになっているのです。
SGEが導入された今、基本的な情報は検索結果の上部に表示されてしまいます。そのような状況でユーザーの流入を増やすには、E-E-A-Tを意識したコンテンツ制作がこれまで以上に重要になるでしょう。
メルマガ配信
ここからは、「検索サイト」「検索エンジン」に頼り切らない場合の、流入経路の確保についての紹介です。まず「メルマガ」は、企業側からユーザーに接触を図ることができる手段です。
マーケティング業界の視点では古参の手法ではあるものの、定期的にメルマガを配信することで効果は表れます。ユーザーのアクションを待たずに接触回数を増やすことができ、ブランディングや信頼関係の向上につなげることも可能。登録ユーザーの専用ページや特別資料といったコンテンツも盛り込めば、コンバージョン率のアップも期待できます。
SNSマーケティング
現在はスマートフォンが必須のツールとなり、それに伴ってLINEやX(旧Twitter)といったSNSも普及しました。年齢や性別を問わず、多くのユーザーがSNSで情報を得るようになっています。
比較メディアUtillyの調査(2022年12月)によれば、日本人が検索で最も使うサービスとして、第3位にYouTube、第4位にInstagram、第5位がTikTokとSNSが急上昇。検索大手のサイトに頼らなくても、SNSで訴求やサイト流入を図れる時代になっています。
これは日本だけに見られる傾向ではなく、世界的な流れのようです。Adobe社の調査(2024年1月)によれば、米国人が検索で使うサービスとして、2位がYouTube、3位がTikTokとのこと。なお、検索にTikTokを使ったことがある人は41%というデータも出ています。
つまり、自社のアカウントを開設してSNSを活用すれば、検索エンジン経由では接触できなかった層にアプローチすることが可能になります。プロフィールから自社サイトへ誘導して流入を増やせるほか、投稿がバズれば、本来接触する可能性がなかった人も含め、より多くのユーザーにリーチすることができます。
動画サイトの活用
先の調査のように、検索でSNSを使う時代になったことをご理解いただけたと思います。視点をもう1段階深掘りしてみると、その多くのSNSで「動画」がポイントになっていることにお気付きになったと思います。検索サービス国内第3位のYouTubeはもちろん、4位のInstagramにはリールがありますし、5位のTikTokも元々動画の投稿媒体です。つまり動画サイト・アプリは、もはや現在のマーケティングに欠かせない存在となっています。
また、動画コンテンツはそれ自体の訴求力が高く、膨大な情報を短時間でわかりやすく伝えることができるのが魅力です。SNSごとのアルゴリズムを分析しながら、自社の取り組みや施工事例の紹介、専門知識のわかりやすい解説、ユーザーのお悩み解決などのコンテンツを投稿して、ユーザーをどんどん獲得して行きましょう。
まとめ
SGEやCopilotは、最新の技術である生成AIを活用した、新しい形の検索体験です。ユーザーには情報収集の効率化という大きなメリットをもたらしますが、Web集客を行っている企業は、アクセス数減少などの負の影響を受ける可能性があります。
そのため、SGEの本格的な普及に備え、自社のSEO対策を見直したり、新たなマーケティング対策――検索サイトに頼らずにユーザー訴求できるSNSの活用、特に動画に主軸を置いたSNS施策を今のうちに講じておくことが重要となります。
とはいえ、検索大手も広告収入の減少やユーザーの減少は避けたいはず。引き続き検索ツールとして使ってもらえるようにUI/UXに変更を加えたり、AIだけ別アプリに分けるなどの動きも出てくると予想されますので、引き続き、検索意図を意識したSEO対策やE-E-A-Tを意識したコンテンツ作りも、継続して行う必要があります。
継続施策と新施策の両軸でのマーケティング対策、ぜひご検討をされてみてください。